お母さんの出身地
映画終盤、リョウたちの走ってくる姿を見て思わず声が漏れたお母さん。昨夜は一睡もできなかったはずだ。緊張と不安の糸が一気に切れたのだろう、その声は「ばっ」
これは九州北部、特に熊本県で使われている方言だ。お母さん役の黒木瞳は福岡県八女市出身で熊本県から近い。もしかしてこの一言は台本にはなかったのだが、つい素の驚き声が出てしまったのかもしれない。
というわけで、お母さんは九州北部出身という新たな設定が出来上がった。
ゾンビバスのリアルに怖い話
学習塾から脱出した子どもたちだったが、すぐさまのっぺらぼうのおまわりさんに追われてしまう。そこでなんとか乗り込んだバスが、ゾンビしか乗っていないゾンビバスだった。
実はこのバス、映画前半、塾のテスト後にマユコとリョウが帰るために乗ったバスと同じなのである・・・・ということは誰でも気づくだろう。その時の乗客の格好や座席位置、バスの種類が、ゾンビバスとまるで同じであるからだ。
問題の話はここからだ。ゾンビバスに乗り込んだとき、かすかにラジオニュースの音声が聞こえる。その音声が何をしゃべっているのか確かめてみよう。
「今夜9時20分頃、槙町(まきまち)スカイライン……の現場で、市営バスが15mの崖下に転落し、乗っていた運転手、乗客全員が…」
雑音で正確な文章は聞き取れないが、それは事故のニュースであることがわかる。これは一体どういうことなのだろう。これまでのお化け(妖怪)は、現実世界のものに化けてでていた、ただそれだけ。しかし、コレに関してはちょっと事情が違う気がする。つまり現実の世界では、マユコとリョウが降りたあの後、バスは崖下に転落するという大事故に遭い、乗っていた全員が亡くなった。そして鏡の世界にゾンビとして現れた、と考えることができないだろうか。
何気なく流れるラジオ音声の内容に注意してみると、一気に背筋がヒヤッとするだろう。ちなみに今作を製作するにあたって、監督である金子修介氏がこんな言葉を残している。
「もっと怖い映画を作りたかった。」
余談だが、ロケ地の岐阜では実際に乗客のほとんどが亡くなるバス転落事故が起っている。この場をかりて、当時の犠牲者の方々にご冥福をお祈りします。